記事一覧 随筆

言葉に根付く文化

更新日:


日本人は褒める語彙が少ない?

先日、指揮のおけいこという本を読みました。この本自体は、指揮者である著者のコラムという形で、読んでいてとても面白いです。

指揮のおけいこ

指揮のおけいこ

posted with amazlet at 14.11.18
岩城 宏之
文藝春秋

「好き」という言葉を使わない恋文

では、日本人の表現をみてみましょう。日本人は和歌、俳句に見られるように言葉の用い方が非常に繊細である、と僕は思います。例えば芥川龍之介が後の奥さんに宛てたラブレターを見てみましょう(COROBUZZより転載)

文ちゃん
先達は田端の方へお手紙をありがとう。(中略)
会って、話をする事もないけど、唯まあ会って、一緒にいたいのです。
へんですかね。
どうもへんだけれど、そんな気がするのです。
笑っちゃいけません。
それからまだ妙なのは、文ちゃんの顔を想像する時、いつも想像に浮ぶ顔が一つ決まっている事です。
どんな顔と云って云いようがありませんが、まあ微笑している顔ですね。(略)
僕は時々その顔を想像にうかべます。
そうして文ちゃんの事を苦しい程強く思ひ出します。
そんな時は、苦しくつても幸福です。
ボクはすべて幸福な時に、一番不幸な事を考へます。
そうして万一不幸になった時の心の訓練をやって見ます。
その一つは文ちゃんがボクの所へ来なくなる事ですよ。(中略)
もう遅いから(午前一時)、やめます。
文ちゃんはもう寝ているでしょう。
寝ているのが見えるような気がします。
もしそこにボクがいたら、いい夢を見るおまじないに、そうっとまぶたの上を撫でてあげます。
以上
十月八日夜 芥川龍之介
塚本文子様

なにがすごいかというと、このラブレター好きという言葉が使われていないのです。自分の感情を「好き」という言葉に抽象化することなく、自分の気持ちを正確に、繊細に伝えようとする姿勢が伝わってきます。

ここで冒頭のゴルフの話に戻ります。英語には褒め言葉に様々な語彙があり、対照的に日本語には語彙がないというという話をしました。しかし僕は、日本語に褒め言葉が少ないのは、文化として作られなかっただけではないのでしょうか。日本には物事を直接的に言わず、遠回しに言う文化があります。逆に、欧米では言いたいことは直接言います。ですから、欧米には褒めるための語彙が多く存在し、日本語にはないのでしょうか。先のゴルフの例でも「ナイスショット」は英語ですしね笑

最近のJ-pop楽曲の歌詞を聞いていると、なんとなくチープな印象をうけます。それは直接的に伝えるという欧米の文化のみが伝わってしまった結果なのではないか、とふと思いました。考え方だけが輸入され、道具が全く揃っていない状況なのではないか、と。どちらがいい、どちらが悪いという話ではなく、言語に根付く文化を大事にしたいと思わされます。


(こういう文章で"欧米”という文字を使うと、対象がふんわりしてしまってまったく具現化されて見えないので嫌なのですが、実際に知らないのでしょうがないですね…)

「面白いじゃん」と思ったらぜひシェアをお願いします!

-記事一覧, 随筆
-, , , , ,

Copyright© ちゃいら随筆 , 2019 All Rights Reserved Powered by STINGER.